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FGO SS1(Fate SS)

このサイト、リリカルなのはに染まる前に、FateのSSが2話ほどありました。
それを読んだ事のある人は、まずいないと思いますが……。

マシュ・キリエライトが好きすぎるんですが、なかなか無いんですよ。
無いなら自家発電が基本なので書いた訳にございます。
最後のやりとりは、ゲームの選択肢を倣いました。それっぽい感じにはなって…る?

※誤字修正

続きからどうぞ。



「……誰もいませんね」

 いつもはサーヴァント達で賑わう食堂には誰もいなかった。夜更けなのだから当然であろう。
 食事の必要の無いサーヴァントだが、中には食を嗜好として楽しむ者もいる。アルトリアやセリバーオルタが最たる例だ。
 薄い闇が広がっている食堂に足を踏み入れると、センサーが反応して、照明がついた。
 無人の配給カウンターに歩み寄る。ただ、何も食べる気になれなかったので、ウォーターサーバーで水を注いだ。
 足元から聞き慣れた鳴き声が聞こえる。

「フォ~ゥ」
「フォウさんも飲みますか?」

 白い小動物が尻尾を振って応えた。用意されているペット用の飲み皿を用意して、水を与える。
 時計を見る。夜が明けるまで、まだまだ余裕がある。
 普通なら、まだ微睡の中にあるはずなのに……。

「フォ~……」
「……心配してくれて、ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。一日くらい、眠っていなくても活動に支障ありません」

 眠れない。寝ようと思ってベッドに潜り込んでも、瞼が重くならない。
 睡魔の足音は遥か遠く。寝返りを打つのにも飽きてしまった結果が今だ。
 溜息をつく。まったくもって情けない。悩みで頭がいっぱいで、眠れなくなってしまうなんて。
 空になったコップに、二度目の水を注ぐ。椅子に座ると、フォウがとことこと駆け寄ってきて、膝の上で小さな身体を丸めた。
 二度目の溜息。天井を仰ぐ。

「……先輩の力になりたい……」

 ああ、なんて簡単な悩みだろうか。
 いや、簡単だからこそ、その解決方法は恐ろしく難しいのだ。
 身体を弛緩させる。椅子の背もたれにだらしなく体重を預け、膝上のフォウを優しく撫でる。

「どうした、マシュ。こんな時間に」

 顔を上げると、濃い紫の髪が揺れていた。
 マシュは息を呑んで、大慌てで姿勢を正した。教師に怒られた生徒の反応そのものだった。ああ、情けない。驚いたフォウが逃げ出してしまった。

「何を緊張している?」

 ケルトの英雄には奔放な者が多いが、彼女にはそうした一面はほとんど無くて。その武人然とした人となりに、マシュは密かに尊敬の念を寄せていた。
 もっとも、マシュの場合、尊敬する者は彼女──スカサハだけではなく、カルデアに召喚されたすべてのサーヴァントなのだが。

「す、すいません」
「何故謝る。おかしな奴だ」

 フォウを抱き上げたスカサハは、テーブルを挟んで、マシュの対面に座った。

「お前の朝が早いのは知っているが、今は朝と言うには半端な時間だ。眠れないのか?」
「……はい、お恥ずかしい話ですが……」
「だから、何を謝る必要がある? 誰であろうと眠れない時はあるものさ」
「……スカサハさんにも、そういう時があるのですか?」
「あろうとも。明日の修行はどうしようか、とな」

 スカサハを見る。その口元は、苦笑で緩んでいた。

「顔を見れば分かる。悩み事があるのだろう? 私で良ければ、聞き手になろう」
「と、とんでもないです。スカサハさんにするようなお話では」
「その判断を下すのはお前ではない。私だ」

 人差し指の先で額を弾かれる。地味に痛かった。さすがケルト神話切っての戦の女神。

「それとも、私では不満かな? まぁ、色恋沙汰は得意ではないが……」

 脳裏に守るべき少年の笑顔が浮かんだが、首を横に振って掻き消した。

「い、いえ、そういう分野ではありません!」
「そうか、それは良かった。では、話してもらおうか?」

 格好の獲物を捉えたような眼で、スカサハが言った。




 膝を組み直し、テーブルの上で頬杖をついて。スカサハが吐息を漏らす。それだけでなんと艶やかな絵になる事か。

「攻撃に参加できない、か」
「はい……最近は、特に火力不足を実感しています……」

 右手を見る。戦闘となれば、その手に握るは身の丈を超える巨大な盾。

「防御であれば、そこそこ自信はあります。でも、攻撃面では、どうしても先輩の足を引っ張ってしまって……」
「それは仕方が無いだろう。サーヴァントであろうとも得手不得手はある。それはマスターも熟知しておろう? まだまだ未熟だが、その采配はなかなかどうして悪くない」

 スカサハが、テーブルの上に乗ったフォウの顎を、指先で撫でる。猫なのか犬なのかリスなのか分からない小動物は、気持ち良さそうに眼を細めた。

「それは分かっています。でも、先輩が一度に使役できるサーヴァントは三体。その内の一体でも攻撃にほぼ参加できないのは……」
「他のサーヴァントに負担を強い、マスターを危険に晒すか。つまりお前は、攻撃こそ最大の防御と言いたいのだな?」
「そこまで極端には考えていません。シールダーとして、守る事には、ささやかですが、矜持はあります。それでも」

 見下ろす掌を握る。

「お前の得物は、敵を討つ武器ではない。自分や仲間を守るモノだ。レオニダス王とは違って、武器を持たぬお前に敵を屠る力が無いのは無理からぬ話よ」
「……これから、きっとさらに恐ろしい敵が現れます。もしかしたら、私の盾で先輩を守れない瞬間があるかもしれません」

 そう考えただけでも、怖気が走る恐怖に襲われる。
 自分から死に急ぐつもりはない。進んで自ら犠牲になるつもりも無い。
 最後まで、あの少年と足掻き続けると決めた。この世界を滅亡から救う為に。
 それでも、と。霧に満たされたパリの時のような、絶望的な瞬間は訪れるかもしれない。
 その時に必要なのは、先輩を守る盾ではなく、先輩の生命を危機に貶める敵を討つ力だと、マシュは思う。
 そう、思ってしまって。実感した。
 この手は、なんて非力なのだろう──。

「マシュ」

 スカサハが呼ぶ。少しだけ、硬さと冷たさを秘めた声だった。

「お前は、少し勘違いをしていないか?」
「勘違い……?」
「サーヴァントは万能ではない。デミ・サーヴァントのお前は分からぬやもしれんが、制約が多い。伝承の多い英雄は、それに類ずる力や宝具を持ち得るが、同時に弱点も抱えてしまう」
「しかし、スカサハさんは、弱点らしい弱点は……」
「死ねない身体は、戦では強みになるだろうよ」

 スカサハが眼を細める。その切れ長の瞳はマシュを見ているはずなのに、しかし、ここではないどこかを見ている気配があった。
 彼女は自嘲の色が滲む声で続ける。

「私が聖杯に託す願い願いがあるとすれば、それは己の死。終わりの無い物語は退屈なものさ」
「……それが、スカサハさんの弱点なのですか?」
「そうは思えぬか? そうさな、例えが悪かったのやもしれぬ。許せ」

 肩を竦めて、スカサハが言った。

「サーヴァントという存在は、お前が思い描くような崇高な存在ではない。できる事とできない事がある。私は、かつては魔術も使えたが、今は槍一辺倒よ」
「キャスターのクー・フーリンさんがいらっしゃるのは、その影響ですか?」
「あれは奴の才だよ。今の私は敵を刺し穿つしか能が無い。マスターを守ったり、魔術で敵の能力値を下げたり、そういう事は不得意だ」
「……しかし、危機に陥る前に、敵を射抜く事ができます」
「そうだな。だが、もしかすれば取りこぼす事もあるやもしれぬ。私とて完璧ではないからな。そうなれば、マスターの身に危険が及ぶ可能性もある。その時にマスターを守るのは、お前だ」
「……役割分担を考えろ、という事ですか?」
「英雄の多くの最後は、足元を掬われて終わっている。アルトリア然り、バカ弟子然りだ。そういう因果なのかもしれん」

 スカサハが背もたれを軋ませて、天井を仰ぐ。

「守るべきモノを守れず、喪い、あるいは殺し、そして最後には殺された。サーヴァントとは、何かを守る事が致命的に不得意なのだと、私は思う」
「致命的に、不得意……」
「だからな、マシュよ」

 席を立ったスカサハは、再び、マシュの額を小突いた。

「デミ・サーヴァントであるお前は、その盾で、自分は違う事と証明してみせよ」
「………」
「お前には、お前にしかできぬ事がある。それを蔑ろにするな。いいな?」

 返事を待たずに、スカサハは食堂を出て行った。
 マシュは小突かれた額を手で摩る。

「……私にしかできない事がある……」

 人間だった頃も、出来損ないで。
 サーヴァントになってからも、成り損なっていて。
 そんな自分に──いや、そんな自分だからこそ、何かを守る事ができる──。
 ふと、気配を感じた。スカサハが戻ってきたのかと思って視線を巡らせると、入り口の方に、見慣れた少年が立っていた。

「せ、先輩!? どうしたんですか、こんな時間に……!?」

 ──喉が乾いたから。マシュはどうしたの?

「私は、その、眠れなくて」

 ──大丈夫? もしかして体調悪い?

「ば、万全です、はい! どんな事態が起こっても、可及的速やかに先輩を守って……!」

 ──うん。信じてるよ。

「……どうして、そんなに簡単に、私を信じてくれるんですか……?」

 ──マシュだから。

「私、だから……? あの、それは、その……理由になってないと、思うんですけど……」

 ──これ以上ない理由だと思うけど。

「……本当に先輩は単純で明瞭で真顔でおかしな事を言いますね……本当に」

 ──多分、バカだからだと思う。

「……ありがとうございます、先輩」

 ──よく分からないけど、お役に立てたのなら幸い。

「はい。では、私は部屋に戻ります。今なら、ゆっくり眠れそうなので」

 ──良かった。じゃ、おやすみ。

「はい。おやすみなさい、先輩」

 


 おしまい。


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Author:ケイン
ゲーム会社勤務のシナリオライター。
趣味はサバゲー。

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